最高裁判所第三小法廷 昭和31年(し)37号 決定 1958年2月11日
主文
本件特別抗告を棄却する。
理由
本件特別抗告の趣意は末尾添附の別紙記載のとおりである。
記録について調査するに、申立人は昭和二〇年五月二一日呂武第一八〇〇一部隊臨時軍法会議において結党(陸軍刑法違反)及び窃盗被告事件につき懲役三年に処する旨の言渡を受け、昭和二〇年九月一三日陸軍軍法会議法第五一一条第五号により刑の執行停止中の者であるが、東京地方検察庁検察官は昭和三〇年九月二七日東京地方裁判所に対し前記併合罪のうち結党罪(陸軍刑法違反の罪)については昭和二〇年一〇月一七日勅令第五七九号大赦令により大赦を受けたので、特に大赦を受けない窃盗の罪につき刑を定める決定の請求をなし、同裁判所は昭和三〇年一二月一四日前記軍法会議が言い渡した刑法の窃盗罪についての刑を懲役一年二月と定める旨の決定をなし、右決定は同年一二月一七日申立人に送達せられたが、申立人は三日の期間を経過した後である同年一二月二三日に即時抗告を申し立てたので、昭和三一年六月三〇日東京高等裁判所は右即時抗告は法定の期間経過後にかかるものであるから抗告の手続がその規定に違反したものであるとして右即時抗告を棄却する決定をしたことが認められる。
従って、東京地方裁判所のした決定が仮りに裁判権乃至管轄権なくしてなされた違法のものであったとしても、その救済については別途の方法を講ずるは格別、本件は法定の期間の経過により確定するに至ったものであるから、その後になされた即時抗告は不適法のものであること、原決定の説示するとおりである。それ故本件特別抗告は到底棄却を免れない。
仍って刑訴法施行法二条、旧刑訴法四六六条一項により主文のとおり決定する。
本決定は裁判官全員一致の意見によるものである。
(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)